THE CLASSICAL     
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  LONG PLAYING RECORDS Matrix Code
  GUIDE       Lacouer Disc / Metal Master
Metal Mother / Syamper
マトリクスコード、メタルマザー、スタンパーといった、レコードの履歴がわかる記号をを説明するまえに、レコードがどのようにして作られるかを、簡単に説明します。
これを知ることによって、それらの記号がどの段階で刻印されたかが、理解できます。
ステレオLPが出来るまでの工程は一般的にいって、つぎのような経過をたどる。
◆カッティング用テープの作成
@ マルチチャンネルによる録音で”オリジナルマスターテープ”をつくる。
A オリジナルマスターテープを2チャンネルにトラックダウンし、”2チャンネルマスターテープ”を作成する。
B 2チャンネルマスターテープからコピーした、”カッティング用テープ”を作成する。
◆レコードの製造過程
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カッティング用テープに録音された音の波形を、カッティングマシンを使って(レコード針のようなカッティング針で)”ラッカー盤”へ波形を刻み込む
カッティング作業を行う。
ラッカー盤とは平坦なアルミの盤に硝化綿(ニトロセルロース、通称ラッカー)をコーティングしたもので、そこに凹型の溝(波形)を刻み込んでいく。
このときに同時にラッカー盤に番号(通常1〜)とその他の符号が刻印される、それがマトリクスコードと呼ばれるもの。
下の”デッカ”や”EMI”を例にとると、マトリクスコードの終わり近くの番号が1番であれば、最初のカッティング作業によるラッカー盤ということになる。
マトリクスコードは出来上がったレコードで確認できる。
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ラッカー盤の表面に厚くニッケルメッキを塗り、ニッケルが十分な厚み(0.3mm程度とされる)を持った時点でラッカー盤から剥離させる。
この凸型のニッケル盤は”メタルマスター”とよばれている。
(1枚のラッカー盤からは、1枚のメタルマスターしか出来ない。通常メタルマスターが出来た時点でラッカー盤は破棄されるという。
ラッカー盤の表面はかなりやわらかく、温度変化にも敏感なので、保存には適さないようである)
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メタルマスターに銅メッキを塗り、十分な厚みをもった時点で剥離し、凹型の”メタルマザー”を作成する。
この時点でもメタルマザーに番号(1〜)が刻印され、できあがったレコードで確認できる。
このメタルマザーで検聴がおこなわれ、ミスがないかどうか確認する。
問題がなければ、このメタルマザーが生産用のマスターディスクになる。メタルマザーも複数枚作られ、何枚目に作られたかはレコードに刻印され
ている番号で確認できる。
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メタルマザーにニッケルやクロムでメッキを施し、それを剥離して凸型の”スタンパー”を作る
これが最終的にレコードを作る元となる。
ここでも刻印がおされ、何枚目のスタンパーであるか、出来上がったレコードから知ることができる。
スタンパーは消耗品として、かなりの枚数が作られる。
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LPのプレスマシンに1面、2面(A面、B面)と2枚のスタンパーをセットして、この2枚の間にLPの原材料であるビニライトを入れ、熱と圧力を加えて
プレスし”レコード”が出来上がる。( You Tubeの投稿動画にレコードの製作現場が映し出されているが、ビニライトはボールを扁平につぶしたよう
な形、ちょうどアイスホッケーのパックの様な形をしていた)
スタンパー1枚から出来るレコードの数は千枚とも三千枚とも言われている。
年代、機械精度、原材料の質等によってもかなりばらつきがあり、一概には言えないのであろう。
メタルマスターから何枚のメタルマザーが出来て、メタルマザーから何枚のスタンパーが出来るかはケ−スバイケースであろうが、メタルマスターが
限界を迎えた時点で、新たにカッティングしたラッカー盤によるメタルマスターが作られる。
(メタルマスター1枚から最大数十万枚のレコードが製造可能だといわれる。)
※上図はLucas Stephanides著 Original Classical LP Label & Pressings Vol 1 The EMI YEARS P.31を参考に作成。
   本の著者も”The Absolute Sound”, p.38 Issue 172 June-July 2007.より引用した旨が記されている。
注)ラッカー盤、メタルマザー、スタンパーの番号は、それぞれの工程で刻印されると思われますが、もしかしたら、ほかの方法でまとめて刻印される
のかも知れません。
◆マトリクスコード、メタルマザーナンバー、スタンパーナンバーの読み方
ここからレコードに刻印された履歴、マトリクスコード、メタルマザーナンバー、スタンパーの読み方について説明します。
通常、時計周りに
●3時の位置にスタンパー番号
●6時の位置にマトリクスコード
●9時の位置にメタルマザーの番号
が記されている。
しかし、スタンパー番号、メタルマザーはとても判読しにくい場合が多く、またラベルの貼り方もアバウトなので、ラベルから見て、
番号の位置がずれている場合が多い。
以下は手元にあるレコードに刻印されている番号である。解かりやすいように、刻印されている番号を白抜き文字で大きく表している。
1) デッカ DECCA
mat-decca1
説明をする上で、やむを得ず、アルファベット、数字ともに
白抜き大文字でレコード上に現しているが、
実際はこの半分以下の大きさの文字が刻印されている
数字の”8”であれば、実際は”8”ぐらいである。
判読もマトリクスコード以外は判読不能のことがあるくらい。
メタルマザーの番号 通称”バッキンガムコード”と言われる。
何枚目のメタルマザーであるかを それぞれの文字が数字の1から9に対応し、
表す。 Mが0をあらわしている。
”1”であれば、1枚目のメタルマザー
mat-decca2
であることを示す
上図”◆レコードの製造過程” BKだと14になり、14枚目のスタンパーで
33
の製造工程で刻印 プレスされたことを表す。
上図”◆レコードの製造過程”
44
の製造工程で刻印
ここで表されているものが、マトリクスコード。”ZAL”が最も一般的な分類コード(Prefix)
でSTEREO録音を意味するようであるが、それ以外のコード《例外?》もある。
”1E”は、1がマスターテープがらラッカー盤へのカッティングが
1回目であることを示す。Eはエンジニアのイニシャル。 ZAL以外のコードとしては、SXL2091のアルヘンタ指揮と
”4094”はテープ番号ではないかと思われる。 イエペス(G) のロドリーゴ ギターコンチェルトではマトリクスコード
が”ESS202”となっている。おそらくスペインデッカのスタッフに
上図”◆レコードの製造過程”
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の製造工程で刻印 よる録音であろう。
     
                                 
2) EMI ASD
mat-asd380
デッカ同様文字が数字に対応。
THE GRAMOPHONE COMPANY LIMITEDの略
GRAMOOPHLTDが使われている。
メタルマザーの番号
mat-asd2
3枚目のメタルマザー
である。
”GG”であるから、11枚目のスタンパーを使っている。
”2REA”はレコード会社が管理の為につけた分類コード(Prefix)の1つ。
EMI ASDでは、2YEAをよく見かける。
1067−3の”1067”はレコーディングの際のテープ番号
”3”はマスタ^テープから3度目のカッティングによるラッカー盤が使われているということ。
     
                                 
3) EMI COLUMBIA
mat-sax2375
手持ちのレコードでは縦に1、2の
mat-asd2
番号が入っている。
一般にメタルマスターからメタルマザ
への複製は10枚が限度といわれて ”O”であるから、5枚目のスタンパー
いる。とすると、押し間違いか?
メタルマザーの番号が1か2であろう
(12枚目はないであろう。)
”YAX”は分類コード(Prefix)の1つ。
192−1の”192”はレコーディングの際のテープ番号
”1”はマスタ^テープから1度目のカッティングによるラッカー盤が使われているということ。
     
                                 
"The RCA Bible" by Jonathan Valin より引用
4) RCA LSC RCAのマトリクスコードの位置は下図のようにレーベルに対して、殆どの場合、バラバラである。
J2 RY5379-1Sの mat-lsc2
"J"はマスターテープ作成時の記号 J2 RY5379-1Sの
E=1954、F=1955、G=1956、 "R"は部門コード
H=1957、J=1958、K=1959、 クラシックをあらわす
L=1960、M=1961、N=1962、 ( T又はPはポピュラー部門 )
P=1963、R=1964、S=1965、 ”Y"はStereo Record のこと
T=1966、U=1954、W=1954、 ( Mono Record はP )
X=1954、
1Sの"1"はマスターテープから
ラッカー盤へのカットが1回目で
あるということ。
Sは”Stamper”をあらわしている
らしい。
5379はマスターテープの分類コード
mat-lsc2-1
     
                                 
このページを作成するにあたっては、以下の書籍を参考にさせていただきました。
Original Classical LP Label & Pressings ( from the 1950's to the 1980's ) by Lucas Stephanides
The RCA Bible ( A Compendium of Opinion on RCA Living Stereo Records ) by Jonathan Valin
Full Frequency Stereophonic Sound by Robert Moon and Michael Gray